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特集記事

第9回対話の杜「絵本哲学カフェ『かないくん』を読む」

10月12日(金)。第9回対話の杜「絵本哲学カフェ『かないくん』を読む」を群馬県太田市のカフェ「アトリエみちのそら」にて開催しました。

以下私の主観が入ってますが対話の経過を纏めてみました。

注:最後の部分は今回の対話を経た後の、私の新しい『気付き』となっています。

「この絵本は前半と後半が分かれている。前半は「死って何だろう?」という問いの素朴な投げかけになっているが、後半は絵本作家のおじいちゃんが亡くなる話が出てきて、感動に誘おうというような意図が見えている。これは必要ないんじゃないかと思った。後半は前半を際立てる演出にしか思えない。もっと純粋に『死』について問いかける前半だけでもいいと思った。そういう作為めいた部分が見えてしまい、心に響かなかった」「絵本はあくまで作品であるし、出版されるからには売るための『演出』も必要だろうからそのあたりは仕方ないだろう」「前半後半で話が分かれている感じがするけれども、私は分かれているとは思わない。複雑に絡み合ってつながっていると感じた」「犬や兎が頻繁に登場するけれども、兎は人が世話をしなければ生きられないようなひ弱さがある。守っていかなければ生きられないようなものの象徴なのではないか?つまり亡くなってしまった旧友のかないくんの思い出を、皆が忘れて日常の生活に戻っていく中で、忘却から守っていかなければならないという想いが兎には込められている気がする」「前半はかないくんの死を理解できず生の中に吸収してしまう、生に支配された日常が描かれている(葬式で笑いを抑える旧友が死の意味を理解していないように)。その象徴が『犬』。犬は生に従順に従うだけ。後半は死と向き合う姿勢が、おじいちゃんの死として描かれている。後半犬が姿を消し兎が登場するのは、兎がかないくんの死の象徴であるから。かないくんの死を自分の死と重ねる事によって、おじいちゃん自分の死と向き合うという内容だと思う。かないくんと兎の関係はわからないが、かないくんが自分の机に兎を落書きしていることから愛着があったのだと思う。兎がかないくんの象徴、若しくは忘れ形見である」「絵本の作為性や、これは何々を象徴しているという事を話し合うのではなく、もっとこの絵本の核心部である『死ぬってどういう事?』について話し合いたい」「はっきりとは言えないのだけれども、誰かの死に対して悲しいとか本当に思えるのか、疑問。親しい人がいなくなれば悲しいけど、知らない人や親密でない人の死にそれほど心は動かないのではないか。つまり特定の死ではなく『死一般』に対しては悲しいとか怖いという感情は当てはまるのか?」「死はかないくんが一人で鉄棒で逆上がりをくるくるしているような、その問いが自分自身に還ってくるようなものであり、誰かとの関係の中で理解されたり答えがあ得られるものではないのでは?」「おじいさんになっても死を知ることはできない。それが『素敵』だというフレーズが良いと思った。死とは知ることができないというのが『死ぬってどういう事?』への答え」「子どもの素朴な問いはワクワクする。宇宙に果てがあるのか?神様はいるの?という問いと『死ぬってどういう事?』という問いは同じ次元の問い。そこには未知に対するワクワク感がある。死の本質は、実は未知の領域に対する『問い』かけと同じような気がする。死とは忌み嫌うものではなく本来そういう、ワクワク感そのものなのかもしれない。死を退けるのはそれが肉体的苦痛や精神的苦痛(≒後悔)と重ねて扱われることが多いからではないか?」「例えばターミナルケアはもしかしたら安心して『死』という未知の領域へ踏み込んでもらうためのケアであるべきなのかもしれない。家族が一緒に過ごしたり、残りの生を楽しんでもらうなどは、本当に死に直面した人にとっては残酷なだけかもしれない。ターミナルケアのケアは旅立つ人の為のケアでなく、残される家族のケアになっていると思う事がある」「しかし自分の体験からも言える事は、死にそうな体験をすることで生きる事に意味を見出せると思う。死は生きる事に価値を見出すためにあり、死という未知の領域に子どもの頃に覚えた未知なるものへの憧れや問いかけを重ねる事には疑問がある」

今回の新たな気付きとして。「死を想う事で生を価値づけるのならばそれは結局生の価値付けを目的としている。しかし逆に死に未知なる領域としての価値を見出したとしてみても、それは死を生の延長としてとらえているだけなのかもしれない。生でもなく死でもなく、ただ『死ぬってはどういう事?』という問いが、生と死の狭間で価値づけられる、という在り方はあり得ないだろうか?」                   2018年10月13日 岡村正敏

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