リ-クリエイティブ アート
誰かの自己実現をケアする事は 私の自己実現のケアでもあります それが生涯学習の理念につながっています ケアと生涯学習 リ-クリエイティブ ・アート はこの二つを結びつける技術です
「Re Creative Art」 立ち上げの理由
高齢者介護の施設とはどういった「場」であるのか?
ここに集う方たちは、高次脳機能障害・認知症・精神疾患・麻痺等による肢体不自由の他(つまり高齢者は障害者でもある)、学歴・職歴・年齢も多様な方たちであります。高齢者の施設なので皆さん65歳以上ではありますが、上は100歳までと30年以上の歳の差があります。しかも施設職員を含めれば20代から60代まで、つまり全世代がその「場」に凝縮されています。職種に関していえば、医師、看護、OT、PT、介護士、栄養士等多職種がチームとなって働いています。これから多国籍の介護士が介護の人手不足を補うようになればこれに多国籍(異文化)が加わる事になるでしょう。つまり介護施設という「場」は、健常者・障害者・多様な学歴・多様な職種、多世代、多文化が混在した多様性そのものの「場」であり、多元社会の縮図のコミュニティである(と同時にアソシエーション)と言えるでしょう。そこでは入所者の方達は、確かに贅沢な暮らしや好き勝手な生活は出来ないけれども、子育てや社会的役割から解放されており、「個」として生きていくには十分な環境が整っています(その保証が施設職員の役割でもあります)。社会の為、誰かのためではなく自分の為に何を為すべきか。そこにじっくり向き合える場であるともいえます。つまり施設とは多様な個人が自身に向き合い自身の人生について振り返り、老年期の自己実現に向けて生活を共にする多元社会のコミュニティそのものであるのです。これはある意味ユートピアと言えるのではないのでしょうか。確かに障害を皆さん抱えていますが、それを補助するのがケア職の役割であるのならば、ケア職の本来の目的とはその様なユートピアの実践的探究であり(大げさに聞こえるかもしれませんが)、そのコミュニティを施設・福祉文化として一緒に創っていく事である筈です。これは私の夢想であり「夢」であります。しかし施設の現場は人手不足と「人財」不足で事後的な対応に追われ、その様な「夢」を抱き、ささやかに実践する事すら困難なのが実情となっています。
職員はスーパーマンではありません。頑張っても給料が上がるわけではなく、また頑張ればどこまでも頑張れるわけではありません。施設側も介護保険内で運営している以上余暇・文化の部分に大幅な予算を割り当てることも出来ません。このように考えてみると、ケア職が施設・福祉文化の在り方を十分に担い得る為には外部の協力を得なければならない事となります。それは個人のボランティアに頼るだけでは質・量的に十分ではなく、やはり「夢」や使命感を持って組織されたNPO法人の力が必要であるはずです。しかし高齢者福祉、それも施設文化と言う観点で活動しているNPO法人はほとんど目にすることはありません(2016年現在、障害者福祉に関わるソーシャルインクルージョンを目的としたNPO法人の活動は活発にみられるものの高齢者福祉は置き去りにされている感があります)。
上記が私が「リクリエイティブアート」を起こした理由であります。
・「リクリエイティブアート」は私が現場で働いていて感じる「必要性」に一端を発しています。
・「リクリエイティブアート」は「介護職という当事者」の行う研究と活動であります。あるいは、私は将来ほぼ必ず施設にお世話になるという意味からも、将来施設で生涯を終える「未来の当事者」であり「未来の当事者」としての研究と活動でもあります。
・「リクリエイティブアート」は超高齢社会の在り方を、アクションリサーチを手法としてインフォーマルに実践する事を目指し、活動しています。
目的
・施設文化の創出(施設文化を超高齢社会の縮小モデルとみなし、健常者の文化との関係を図る)
・学術と現場の乖離の克服(アクションリサーチを手法とする)
・ケアと生涯学習の架橋
・個人概念の構築(「明るい実存」としての個人概念の構築)
現在私一人で活動していますが、認知症の方を対象とした絵画教室は好評を得ています。
将来活動を一般社団法人、NPO法人化したいと思っていますが、大きな団体にするつもりはありません。理念やコンセプトも硬直化させないよう、ゆるく保持して行ければと思います。また実践に終始するだけでなく現場から現場の言葉で学術的な提言を行えるよう、資料の蓄積と研究を行っています。
2016年9月20日 岡村正敏