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特集記事

視覚障害者とつくる美術鑑賞ワークショップに参加:報告と考察


11月23日。視覚障害者とつくる美術鑑賞ワークショップに参加しました。場所は神奈川県川崎市市民ミュージアム。

「視覚障害者とつくる美術鑑賞ワークショップ」とは?

以下FACEBOOKの紹介文より転載です。

「障害の有無にかかわらず、多様な背景を持つ人が集まり、ことばを交わしながら一緒に美術を鑑賞するワークショップです。さまざまな視点を持ち寄ることで、一人では出会えない新しい美術の楽しみ方を発見できるはず。誰もが気軽に美術館を訪れて、感じていることや印象、経験や考えを自由に語り合う、そんな美術鑑賞のスタイルを目指しています」

「目的 1、視覚障害者をはじめとするあらゆるニーズを持つ人にとって美術、文化へのアクセシビリティを高めます。

    2、異なる価値観を持つ人同士が様々な視点を持ち寄ることで「みる」「鑑賞する」ことの新たな楽しみ方を考

えます」

美術鑑賞は2つのグループに分かれて行われました。私のグループは全盲の方2名。聾の方1名。晴眼者が私を含め4名(他通訳2名)で、計7名で作品鑑賞をしました。観賞した作品は3作。時間は40分。つまり1作品につき10分弱作品の前で立ち止まり話し合ったことになります。この体験はこれまで一度もない事でした。大抵3分も作品を眺めれば十分です。また7名もの人達が自分が感じた事、思った事を発表し合う体験も私にはなかったし、誰かが美術館でそのようなことを行っているのを見たこともありませんでした。勿論学芸員や作家が作品を解説する事はよくあります。しかしそれはそのようにしか作品を見ることが出来ないという事でもあります。

間違っているかもしれないけれども、画面の隅々に目を凝らし(10分も!)、思考をフル回転させながら作品を観て読む事。それはとても愉しい体験でありました。

繰り返します。とても愉しい体験でありました。私は「視覚障害者とつくる美術鑑賞ワークショップ」に参加しているのだという事をすっかり忘れる程愉しんでいたのです。つまり「全盲の方がわかるように話さなくては」とか「全盲の人だから色や形の説明は控えた方がいいだろう」とか、逆に「全盲だからこそ色や形の事を詳しく話した方がいいのでは?」という意識・・・「障害者だから」という意識が頭から吹っ飛んでしまっていました。もちろん多少は配慮して話はしましたが、話の内容を振り返ってみると「障害者」と一緒に美術鑑賞をしているという意識はぽぼありませんでした。全盲の方も先ずは晴眼者が作品について語る内容に耳を傾け、その情報をもとに作品の観念を構築し、それをしっかりした言葉で話されていたからだと思います。

観賞終了後、ワークショップ運営メンバーの一人でもある全盲の木下氏にこの事を伺うと、それは人により違う、という話でした。色や形を知りたがる人もいるし、今回の様に特にそのような配慮を必要としなくても、時代背景や思想的文脈から作品を理解する方もいる。その辺はどちらが正しいといえるものではないのではないか・・・。そんな答えが返ってきました。

私もそうだと思います。だからこそ「障害」と言う壁や、意識のバイアスが取り払われて見えてくるものは、障害のあるなしに関わらない、その人「個人」なのだと思います。インクルージョンや、多様性の理解という試みは、その実現で個人が「個人」となる事を目指すのでなければ、インクルージョンという強制や、多様性という名の下での集団の細分化に終止してしまうのではないでしょうか?

私が今回のワークショップで愉しかったのは、参加者同士が日常の言葉で、感じた事、思ったこと、考えたことを「障害」や「学歴」や「職業」の制約なく発表し合えたからだと思います。更に各々の話を聞きながら改めて作品を見る、感じる、思う、考える。そして再び意見として発表する、という対話の循環が成立していたからです。これは健常者同士であってさえ、出来そうで出来ない事だと思います。大抵はそこまで対話によって相手の懐に踏み込むことに躊躇して、無難な会話で終わってしまいます。その意味でもこのワークショップはとても愉しかったのです。

強いて言えば、「視覚障害者とつくる美術鑑賞ワークショップ」と言ってしまう事で、視覚障害者と晴眼者は違うのだという事が逆に強調されてしまうかもしれない、と思う事はありました。事実私は今回「視覚障害者とつくる」ではなく、「個人で集う美術鑑賞ワークショップ」として愉しめたのですから。しかし、このあたりのことは将来的に解消されていけばいいのかな、と思います。

                                2016年11月23日 岡村正敏

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