基礎講座「医療とアート」 群馬大学×アーツ前橋 アートスクール計画基に参加:報告と考察
群馬大学×アーツ前橋 アートスクール計画の基礎講座に参加しました。
↓
■基礎講座7「医療とアート」 11月13日(日)13:00-15:30 会場:シネマまえばし 定員:先着100名
髙橋伸行(アーティスト/やさしい美術プロジェクトディレクター) 「やさしい美術―医療福祉との協働によるアートプロジェクトの可能性」 山口悦子(大阪市立大学大学院医学研究科医療安全管理学准教授 /大阪市立大学医学部付属病院医療安全管理部副部長) 「創造的なコミュニティを育てるマネジメントのコツ~病院の事例を参考に」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
高橋信行氏はアーティスト。医療の現場とアートを結びつけるプロジェクトを大学で学生たちと実施している方。
山口悦子氏は医療安全学の立場から病院の人材マネジメント等に院内セクションとして携わっている方です。
高橋氏は活動事例、山口氏はマネジメントの理論部分の説明を主にされた内容でした。
以下とても大雑把ですが話の大筋です。
・高橋氏の話。優しい美術プロジェクトは即効性はないが、医療従事者の「病院はこうである」という固定観念を
揺さぶり、患者にとって「キュア」に限定されない、総合的な医療の質を提供できるような新しい「場」の可能性を
開くことが出来る。
・山口氏の話。医療の院内マネジメントとしてアートマネジメントをセクションとして取り入れる事で、院内環境の
改善(職員の人間的教育に向かう改善)に有益である。
以下はお二方の話を聞いての私の所感です。
・アーティストは、プロジェクトとしての活動と、作家活動を混同せべきではない。
その意味で、マネジメントセクションのアートマネジメント部門として活動するべきであろう。
・作家が現場に介入する際も、自分の作品に関連つけることはすべきではない。
・アートの社会性を表現や示威行為ではなく、プロジェクトとして参画するという事は、そのような職域として自覚
するべきである。
まとめ
「障害者とアート」「福祉とアート」「街つくりとアート」「地域とアート」等々、昨今のアートの社会性の動向は、ヨーゼス・ボイスの社会彫刻や拡大された芸術概念の流れを汲んでいるように思えてなりません。しかし私は、ボイスは社会活動(市民活動・政治活動)と作家性を混同してしまっているようであまり評価していません。作家性と社会性は分離するべきだと思います。そしてそれでも社会と何らかの接点を持ちたいのならば、作家としてではなく、有用性のアート=技術として、職域とすべきだと思います。
職域ではないアートと社会の接点というものがあるのだとしたら、それはプロテストとしての表現や、示威として、または可能性の示唆行為としての物言わぬ在り方(そもそも自分のためにだけ制作をしていたヘンリー・ダーカー等)にしかないと思います。それは職域ではなく、個人の活動としてなされなければならない領野だと思います。
従って、今回の講座では、高橋氏と山口氏のアートへの向き合い方の違いが特に興味深かったのですが、山口氏の向き合い方に私は強く共感します。
2016年11月13日 岡村正敏